第13章 Childhood's end
二宮side
背中を擦る手の心地よさに身を委ねる。
饒舌ではない智が一言ひとこと、
言葉を選びながら話してるのがわかる。
俺のために選び語る言葉。
その声が俺の心を包む。
止まらない涙をそのままに、
俺を抱きしめる智の体温と優しい声に
酔いしれる。
亡霊のように現れた過去に凍りつく心を
その声が体温が…徐々に融かしていく。
いつからかはわからないけど、
俺はこの人へ
過度のスキンシップをするようになった。
緊張したり、不安になると
ふざけたふりでこの人に触る。
余りにも頻繁なスキンシップに
もはや誰もなにも言わない。
まわりから見れば
単なる悪ふざけでしかないスキンシップは
俺にとっては最早、不可欠で…。
この人はそんな俺をいつも受けとめ、
なにも言わずに受け入れてくれる。
そしてそのまま俺にも
スキンシップを返してくれる。
この人の柔和な笑顔を見るだけで
心が落ち着いていく。
まーくんの幼馴染みみたいな空気感や
翔さんに感じる兄のような包容力や
Jとの親友みたいな関係とは違う。
この人だから創れる
癒しの空気につつまれる。
瞼に落ちてくる智の柔らかな唇。
その感触の心地よさに笑みが溢れる。
髪を撫でる手に導かれるように顔を上げる。
智の濡れた唇。
自分の涙の味がした…。