第12章 tie me up… tie you down…
大野side
翔ちゃんがくれるキスがもどかしい。
音だけのキスは耳から躰を犯す。
刺激が欲しくて焦れる躰。
なのに…。
翔ちゃんは音だけのキスさえ止めてしまう。
余裕の表情で焦れるおいらを見ながら
シャンパンを飲む。
その姿が優雅で…
今のおいらとのギャップに
おかしくなりそうになる。
翔ちゃんの視線がおいらを射る。
全てを見透かすような視線に羞恥が募る。
「翔ちゃん……やだ……見ないで……」
翔ちゃんの視線から逃れようと身を捩るけど
拘束された腕が邪魔をする。
視線から逃れることも
新たな刺激を貰うことも出来ずに
もどかしさだけが積み重なる。
S:「智くん?
躰をモジモジさせてどうしたの?
俺、超能力者じゃないから
言ってくれないとわからないよ?」
翔ちゃんの意図が透けて見える。
多分、素直に翔ちゃんを求めるおいらを
…待ってる。
そう、恥ずかしくって全てをさらけ出せない
自分がいるのはわかってる。
理性を完全に失い、
身も世もなく翔ちゃんを求めて
最後の一線を越えてしまった後に
自分がどうなるかが怖くって…。
躰の快楽のために
望みを口にすることはあっても心は…
どうしても最後の一線を越えられない。
だからいつも翔ちゃんがくれるものを
待ってしまう。
翔ちゃんがすることだからと…
翔ちゃんが言わせるからと…
『翔ちゃんが』と
あくまで受け身であるという立場に
自分を置いて翔ちゃんが用意してくれる
言い訳に逃げるおいら。
狡くて…甘えてて…。
おいらの本心を知りたいと望む
翔ちゃんの気持ちと
おいらを守るための葛藤が
用意させたんだよね?
媚薬という名の…
シロップを…。