第12章 tie me up… tie you down…
大野side
あの一連の忌まわしい事件の時、
媚薬というか興奮剤というか…
いわゆるその手のものを使われた。
無理矢理、体を煽る圧倒的な熱をもった毒。
自分の気持ちなんて関係なく単純に、
でも否応なしに体に性的興奮をもたらす。
ただ熱の放出を求める体と冷めきった心。
もしかしたら、
そこにお互いを思う気持ちがあれば
別なのかもしれないけど…
それでもきっとあの強烈な熱は
変わらないと思う。
でも…今回飲んだモノには
その強烈な毒も熱もなかった…。
そして気づいてしまった。
翔ちゃんの気持ちも…望んでいることも…。
あくまでもおいらに火をつけるのは
翔ちゃんの視線であり言葉であり、
唇であり、気持ちだった。
焦れる躰と心。
沸点に達しない理由は…自分。
おいらは果たして翔ちゃんに
自分の本当の気持ちを伝えてきただろうか?
多分…いや間違いなく答えはNoだと思う。
全く伝えてない訳じゃない。
でも…。
なら…踏み出せばいい…
ずっと待ってくれている
翔ちゃんに向かって…。
「翔ちゃん……翔ちゃん…お願い……
腕、ほどいて…」
S:「ん?どうして?」
「このままじゃ…翔ちゃんに……
触れないよ……。
触れたい……翔ちゃん……
お願い……だか…」
鎖を鳴らして翔ちゃんに訴える。
「…っんッ」
翔ちゃんの唇がおいらの言葉を妨げる。
絡む舌に必死で自分の舌を絡める。
呼吸が出来なくなるほど激しいキス。
頭がぼーっとしてくる。
耳許で音を立てる鎖。
手首を包むモノが無くなった瞬間、
おいらは自由になった腕を
翔ちゃんに伸ばし抱き締めた。