第12章 tie me up… tie you down…
大野side
これから先に起こることを予想して
暗澹たる思いに囚われる。
一応、確認する。
「おいらに拒否権はないんだよね?」
S:「どうしても嫌なら……いいよ。
無理強いしたいわけじゃない。
それなら最初からダマで飲ませれば
いい訳だし…」
にこやかに、でも恐ろしいことを
軽く言ってのける。
S:「ご褒美…だからね。
智くんの自らの意思で選んで…
飲んで欲しいんだよね…」
「おいらの意思?」
S:「そう、
それで淫らに乱れる智が欲しい…」
そう言って笑う翔ちゃんの顔は
サディステックで
でもすごく真剣に見えた…。
答えはおおよそわかっているのに
確認せずにいられない。
「おいらが…その……
みっともないぐらいに…乱れても……
翔ちゃんは……おいらを…軽蔑しない?
嫌いにならない?
受け止めてくれる?」
S:「当たり前だろ?
俺がそれを望んでるのに…」
そこにあるのはいつもの翔ちゃんの笑顔。
S:「なにがあっても
智くんを離す気はないよ。
例え世界中、敵に回しても、
智くんだけは離さないよ。
だから……
俺だけにしか見せない姿を見せて」
翔ちゃんの言葉に覚悟を決める。
目の前にある2つの小瓶をみつめる。
記憶に残らない薬と記憶に残る薬…。
片方の小瓶を手に取り、
泡の消えかけたグラスに中身を入れる。
紅く重たい液体が
琥珀色の液体の中に筋を描く。
そしておいらはグラスの中のシャンパンを
一気に飲み干した。