第11章 Sweet remedy
櫻井side
手の上の瓶に遠い日を見る。
「ほんと、たまたまだったの。
ロケ地がさお祖母ちゃんの家の近くで
ロケの前にちょっとだけ顔出したの。
マネージャーに頼んでさ、
時間作ってもらって。
でもさ、ホントに顔出しただけで
終っちゃって…。
そん時さ、お祖母ちゃんが
『お仕事で緊張しそうな時に…』って
この小瓶ごとくれたの」
N:「翔さんのお祖母ちゃんがくれた
【魔法の薬】なんだ、その金平糖」
ニノが優しい目をして言う。
「結果的にはそうだね。
その後も似たようなことがある度に
智くんに渡して…。
これならさ、害はないじゃん?
しばらくしてかな?
智くん、この小瓶の中身を取り出して
自分でも持つようになったの。
まさにお守りだよね。
以来、ここに入れてるの」
小瓶を引き出しにしまいながら聞く。
「ニノさぁ、金平糖の作り方って
知ってる?」
N:「え?作り方ですか?」
「金平糖ってさ、作るのに
スゴい時間が掛かるんだって。
核になるざらめを入れてそこから
何度も何度も熱い蜜をかけて掻き回して
あの形になるんだって。
確か2週間って言ってたかな?完成まで。
そう思うとすごくない?
小さなざらめが時間をかけて
大きく綺麗に成長する感じ。
なんかさ、
ちょっと俺たちみたいじゃない?」
感心した顔のニノが俺を見る。
N:「その話、あの人に話したことある?」
「うん、多分話したと思うよ、
かなり前じゃないかな?」
N:「ふ~ん。そっかぁ」
「なに一人で納得してるの?」
N:「いや、別に…」
と、その時、
玄関からただいまの声が聞こえた。