第11章 Sweet remedy
二宮side
翔さんの手のひらの上の小さな星に
指を伸ばす。
「もらってもいい?」
S:「もちろん」
翔さんが頷く。
いくつかを指で摘まみ口にする。
「甘いね」
S:「まぁ砂糖の塊だからね」
「翔さんだったよね?
これ、ここに入れるようになったの」
S:「そう…」
「ねぇ、なんで金平糖だったの?」
S:「あぁ…。話したことなかったっけ?」
翔さんが柔らかく笑う。
S:「昔ね、俺の習い事の発表会だったかな?
すっげー緊張してたのね。
そしたらさ、見に来てた
俺のお祖母ちゃんが金平糖を
俺の口の中に放りこんだの。
俺さ、ビックリしたのと甘さとで
緊張解れてなんとか成功したの。
それ以来かな?
お祖母ちゃんがさ、
お守り代りじゃないけど事あるごとに
金平糖を寄越すの」
翔さんも手に乗った金平糖を口に運ぶ。
S:「これ!この甘さが
ホッとさせてくれるんだよね」
少し遠い目をした翔さんが続ける。
S:「あの日さ、
かなりきつめのスケジュールでさ。
智くん、飲んでた安定剤の
有効期間っていうの?越えちゃってさ。
でもロケ、なかなか終わらないし、
手元の薬も無いし、
有っても処方の限界越えちゃうから
渡せないし…。
しかもあの人まともに寝てなくてさ、
スゴイヤバそうだったの。
ふたりっきりのロケでさ…。
当然、言えないじゃん、周りには。
でパニック起こす寸前の智くんの口に
『これ舐めると落ち着くから』って
放りこんだの。
気休めにしかならないの
わかってたんだけどさ。
でもさ、なんかホッとした顔してさ、
その日のロケ終えたの」
翔さん自身がホッとした顔をしてる。