第11章 Sweet remedy
櫻井side
リビングにあるキャビネット。
いつもの引き出しを開ける。
引き出しの中には小さな瓶がひとつ、
入ってる。
もうずっとこの瓶の定位置はここ。
俺は定期的にこの引き出しを開け
中身をチェックする。
中には小さな粒が入ってる。
手の中でシャラシャラと音をたてる。
あまり減っていない中身に笑みが溢れる。
そう、これが減らないってことは
落ち着いてる証拠。
いつかこの小瓶が忘れ去られる日が
くればいいと心から願う。
「今回は…足さなくて大丈夫そうだね」
ひとり呟く。
リビングに近づく足音。
振り返るとニノがいた。
N:「あれー翔さん帰ってたの?」
「お、ニノ、おかえり。
予定より早くない?
もしかして巻いたの?」
今、ドラマの撮影に入ってるニノ。
帰りはだいぶ遅くなる予定だった。
N:「というよりはスタッフサイドの問題で
今日は一旦解放されたの。
明日も朝からだよ。
そういう翔さんも早くない?
俺が一番だと思ったのに」
「そうなんだぁ。
こっちは打ち合わせが予想以上に
早く終わってさ。
特に用事もなかったから
そのまま帰ってきちゃった」
N:「翔さん、それ」
ニノの視線が俺の持つ小瓶に向けられる。
「うん、ここんところさ
中身の確認してなかったから。
念のために…と思って」
N:「相変わらず減ってるの?」
「いや、最近はほとんど減らないよ。
補充しようと思ったけど…
止めたぐらいだから」
俺は小瓶の蓋を開け、
中身を手のひらに乗せる。
手のひらの上に小さな星が散らばった。