第20章 Sweeter than SWEETS
知ってるからこそ聞かなかった。
聞いたらきっと一瞬顔を曇らせてでも笑顔で「大変だけど楽しいよ」って多少無理してても言うだろうから…。
…なのに聞いた。
「紅白の準備、大変?」
やっぱり曇った顔に更に言葉を重ねる。
「何が辛い?」
その一言に雅紀の目から涙が零れ落ちた。
「もういいよ、辛いなら辛いって言って。
大丈夫全部受け止めるから。
代わることは出来ないけど…聞くことは出来るよ。
ね、全部吐き出しちゃいなよ」
荷物を一緒に持とうと思ったけど、雅紀は意地でも渡す気はないでしょ?
ならさ、下ろしちゃいなよ、1度。
沢山背負い込んだ荷物を全部おろして1度深呼吸しようよ。
本当に大事なものはそれからもう一度、持てばいい。
雅紀にとって本当に必要なものだけをきちんと持てばきっと上手くいくよ?
相葉ちゃんの口から少しずつ零れ落ちる言葉は正直、想像を超えていた。
なんでもっと早く聞かなかったんだろう?と後悔しなかったと言ったら嘘になるけど…。
でもここで今、後悔しても何も生まれない。
泣きながら…重荷を下ろすようにポツポツと話す雅紀を抱きしめて、いつもよりも小さく見えた背中を摩り続けた。