第20章 Sweeter than SWEETS
「ねぇ、少し…話、しようか?」
おーちゃんがそう言って俺の前に座った。
「雅紀?こっち見て?」
穏やかな少し低めのトーンの呼びかけにノロノロと顔を上げた俺の目に映るのは柔らかな表情のおーちゃん。
「紅白の準備、大変?」
全然関係ない人達からは何度も聞かれたその質問。
でも、みんなは1度も聞いてこなかった。
だって、みんな知ってるもんね?
紅白が大変なこと。
今年はみんなでやった時と責任者が変わって演出も大幅に変わって…本当に1からやってるような状態になってるのが実情。
決まったと思った台本は次々と変わり、やると言ったものは破棄され、やらないと言ってたことを急遽やると言い出す。
俺たち司会も、スタッフも楽器やダンスの人たちも振り回されっぱなし。
でもプロデューサーは変更することに全く痛みを感じてないし、周りの負担も度外視で上からどんどんオーダーしてくる。
武田さんはその環境に慣れてるからなのかそれともNHKの局員だからなのかなにも言わないけど…架純ちゃんのフォローしながらの現状に正直疲れてて…。
おーちゃんの優しい問いかけに気がつけば泣きながら辛いと現状を吐き出してしてた。