第4章 6月
その次の日も私たちは同じファミレスで勉強会。
本日の教科は世界史。
「じゃあ僕が問題出すね」
今日は暗記系科目が得意な芝山くんが先生をやってくれていた。
「1789年に起きたフランス革命の発端となった事件をなんと言うでしょう」
フランス革命…確か先週の授業でやったはずなんだけど。
なかなか答えを出せない私たちに芝山くんがヒントをくれる。
「えっと、特権を持った貴族に怒ったフランス人達がどこかを襲撃したんだけど、その場所はどこかな?」
「…うーん、フランス城?」
「ねーよ、そんな城ッ!」
バシーンと叩かれ「ギャウッ」と声を上げる犬岡くん。
リエーフは今日も今日とてスパルタで、世界史の教科書を丸めて待機していた。目が凄く怖い。
「鈴さんはわかった?」
芝山くんに促されて、必死で考える。
フランスの貴族?が襲撃されたんだよね…
「最初の文字は"バ"だよ!」
「……!バ、…バッキンガム、宮殿」
バシーン。
「ひゃんっ!」
不意打ちだと、痛いかも。
「それはイ ギ リ ス だ!」
「ああ灰羽くん、そんな叩かなくても…」
「だってあと6日しかないんだぜ?」
「…そ、それは、そうなんだけど…」
二人が話してる間に痛む頭を押さえながらチラリと犬岡くんに目配せする。彼はヒソヒソ声で「ぜんぜんわっかんねえ」と言ってきた。私もうんうんと同意した。
「じゃ、じゃあノート見てもいいよっ!ノート見ながら授業思い出すのも勉強になるし」
答えられないままも悔しいけど、どんどんハードル下げられて、それもなんだか少し悲しい。
カバンから世界史の黄色いノートを出して、先週やったフランス革命のページをひら……
「鈴…この授業寝てただろ」
「うっ……」
ノートを覗き込んだリエーフがバッサリと言う。
《6/20 【フランス革命】》
タイトルはとても丁寧な字でさらに色ペンでぐるっと囲ってある。
しかし肝心な本文はだんだんと右下がりになっていて、途中からぐにゃぐにゃとミミズが這ったような字。最後はまるで…象形文字。自分で書いたはずなのにまるで読めない。
(は、恥ずかしい…)
「犬岡くん……君のノート、もはや真っ白なんだけど」
「え、えへへっ」
「えへへじゃなくて…」