第6章 7月下旬
「森然高校の父兄の方から、スイカの差し入れでーす!」
体育館に宮ノ下先輩の声が響くと、みんながキラキラとした視線を向けて集まってくる。スイカパワー凄い。
次々と上がるおかわりの声に、私は追加のスイカを持って、体育館と食堂を往復することになった。
それも一段落すると私もやっとスイカに有りつく事ができた。木兎さんに手招きされて体育館前の階段に座る。
今度の合宿で顔と名前が少しわかるようになったから、梟谷の人たちももうそんなに怖くはない。
ふと体育館の裏山の斜面で烏野のメンバーと談笑する鉄朗の姿が目に入った。その中にはあのメガネの月島くんはいないようだったけど、誰とでもコミュニケーションが取れる鉄朗がこんな時どうしようもなく羨ましく感じる。
「しっかし鈴は兄貴と似てねえな。ホントは血ィ繋がって無いんじゃね?」
「……え、あ、ハイ」
「木兎さん失礼にも程があります…って鈴さん今なんて…」
しまった。
「なんだとおおおおおおお!?」
木兎さんの超絶リアクションが響き渡る。
つい昨晩の事を考えていたせいでというのは言い訳かもしれないけれど、人に言うなと念を押されていた秘密をポロリと零してしまった。
「ふざけんな黒尾!テメェはエロゲの主人公か?チクショー!」
「……えろ、げ?」
それはつまり、エッチなゲームの総称?
「深く考えてはいけません」
私の両肩をがっちり掴んで、笑顔なんだけど有無を言わさぬ赤葦さん。
「良いですね?」なんて、言われたら素直に頷いて考えを放棄するしか無い。
木兎さんはとっくにスイカの皮を放り投げて、鉄朗の元へダッシュしてる。
「黒尾、次の試合鈴のお兄ちゃんの座を掛けて勝負だ」
「はァ?何言ってんだコイツ」
「うるせー変態!ぜってえ負けないからな!」
(なんだか大変な事になってしまった)