第4章 6月
次の日。私たち1年生4人組は部活後、学校近くのファミレスにて勉強会をしていた。
本日の教科は英語。
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次の英文を過去の文にしなさい。
①I live in Tokyo.
[I live in Edo.]
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「そこじゃねえよお!」
べシーン。
犬岡の小テストの回答にリエーフが丸めた教科書で激しくツッコむ。
ぎゃうん、と無抵抗で叩かれた犬岡くんはまるで叱られた大型犬みたいで、しょぼんと垂れた犬耳が見える気がした。
「は、灰羽くん落ち着いて!」
「…リエーフ、だめ、…可哀想」
般若の顔したリエーフがギロリとこちらを向く。
「鈴、お 前 も だ!」
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②I buy new shoes.
[I buyed new shoes.]
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「なんでもかんでもed付けんじゃねーよ!不規則動詞ぐらい中学で覚えろッ!」
リエーフが教科書を振りかぶった。
私は反射的に両手で頭をガードする。叩かれてこれ以上頭悪くなったら大変だ。
べシーン。
「ひゃうっ!」
容赦の無い一撃。
でも、音の割には意外と痛くないかも。
「うわああ、鈴さん大丈夫っ!?」
大袈裟に慌てる芝山くんにコクコクと頷き返す。
「芝山、コイツらテスト範囲どころか、基礎が危うい」
「う、うん。僕も同じこと思ってたよ」
電子辞書とにらめっこをして、間違えた問題をノートに正しく書き写す。
そっかbuyは過去形だとboughtになるのか。
「なあなあ鈴、なんで過去になるとedつけんのか知ってる?」
犬岡くんの問い掛けに、私はペンを止め首を傾げる。
そういえば、なんでだろ。
「俺考えたんだけど、edつけると住んだ。が住んだどー!になるから、そういう事かなって!」
「……住んだ、どー?」
「うん!買った。が買ったどー!って、俺ついに買ってやったぜみたいな気持ちになるんだよ!それが過去形?」
「…よく、わかんないけど…そうなのかな?」
そうだよそうだよ、とはしゃぐ犬岡くんに求められるがまま理由もわからずハイタッチ。
「アイツらの会話、マジ異次元…」
「そ、そうだね…」
テストまであと7日。