第4章 6月
「…数学、英語、物理なら俺教えられるぜ」
「あ、僕は世界史と、選択教科犬岡くんと同じの選んでるから教えられると思うよ」
「……う、うぅ……こ、国語、なら」
「鈴ー、いつからオマエは人に教えられる程頭良くなったんだァ?」
嫌味たっぷりの黒尾の声に鈴の肩がビクッと震える。
「へー鈴ちゃん真面目そうなのに、意外」
控えめに驚く夜久に黒尾は続ける。
「全体的にヤバイけど、特に数学は壊滅的。センスがねぇ」
確かに国語だけはまあまあできるみたいだがな、とあまりフォローにならない一言を付け加える。
自身の残念な頭脳レベルを容赦無くあばかれ、鈴は顔を赤くして俯く。
「てか芝山はともかく、なんでオマエまで教える側に回ろうとしてんだよ、リエーフ」
納得できないとでも言いたげに、ビシッとリエーフを指差して黒尾は言った。
対するリエーフは得意気な顔だった。
「…実は俺、こう見えて学年4位の秀才なんスよ!」
ドヤ顔…とでも言うべきか。
「ハイハイ嘘乙…で実際どうなんだよ?」
リエーフの戯言をサラリと受け流した黒尾は問い掛ける相手を、芝山にシフトする。
「いやぁ、それがですね…」
「…え……マジなの?」
音駒バレー部に衝撃が走った。