第4章 6月
―音駒バレー部と期末テスト―
彼らが事の重大さに気づいた時には、それはすぐそこまで迫っていた。
顧問からの伝達事項があるとのことで、片付けとモップ掛けを終えた音駒バレー部は黒尾の周りに集合した。
「来週月曜からテスト週間だから部活は5時半までな。それと…2,3年はわかってるかもしんねーけど、赤点とった奴は来月の夏合宿は居残り。以上、解散」
「ありがとーござーっしたー」と運動部独自の挨拶が響いた後、ざわざわと撤収し始める部員たちの中でただ一人…犬岡走は崩れ落ちた。
「俺も、合宿………行きたかった」
瞳には薄っすらと涙を浮かべていた。
「い、犬岡くんっ、諦めるの早いよ!」
「そうだぞ犬岡!」
「…き、きっと…大丈夫、だよ!」
取り乱す1年連中を上級生たちはニヤニヤと見守る。
「やはり犬岡もコチラ側の人間か」
「…虎、何カッコつけてんの」
自慢げにフフンと笑う猛虎に研磨がツッコミを入れる。
「犬岡、赤点取りそうな教科ってなんだ?」
リエーフの問いに、犬岡は力なく答える。
「た、体育以外…?」
その時、全員が思った。
あ、これダメかもしんない…。