第4章 6月
久しぶりに入った鈴の部屋。
ベッドやカーテンの色使い、勉強机に飾られた小物の一つ一つが女子の部屋っぽさを醸し出して、自分の家なのに緊張する。
静かに鈴をベッドに下ろす。
「…んっ」
小さな声がしたから起こしてしまったのかと焦るが、鈴は寝息を立てたままだった。
水玉模様の薄い掛け布団をそっと肩まで掛ける。
電気を消してそのまま立ち去ろうとするが、なんだか名残惜しくてもう一度鈴の顔を覗き込む。
最初はよく見えなかったが、だんだんと暗闇に目が慣れてくるに連れハッキリ見えた。
鈴はとても苦しそうな顔をしていた。
「………け…て…」
なんと言ったか定かでは無い寝言。
でも俺にはどうしても、助けてって言ってるようにしか聞こえなかった。
「鈴、大丈夫だぞ。俺がついてる」
そう言って俺は鈴の手を握る。
たぶん無意識だが鈴も俺の手を握り返す。
力を入れればポッキリ折れてしまいそうな、細くて小さな白い手。
それを俺は大事に大事に握っていた。