第4章 6月
朝。黒尾鈴はいつも通りに目覚め…
「て、て、鉄朗!?」
(なんで?なんで鉄朗が隣にいるの?)
目を覚ますと、何故か隣に鉄朗が寝てた。
「…ん、んっ…相変わらず朝早ぇなァ」
Tシャツ姿の鉄朗は横になったまま、まだ眠そうに瞼をゴシゴシ擦っていた。
思い掛けない光景に私が固まっていると、鉄朗は急に心配そうな顔をして聞いてきた。
「鈴、今日も怖い夢見たのか?」
(…あれ、そういえば)
言われて思い出す。朝一で驚いたからすっかり忘れていたけど、今日は久々に怖い夢で起きなかった。
「…今日、は…見てない…かも」
そう言うと鉄朗は優しく笑って私の頭に手を伸ばす。
目を瞑ってそれを受け入れると、寝起きの頭がもっとくしゃくしゃになってしまった。
「怖い夢見てねぇならもう少し寝とけよ」
ココに来いと、自分の隣をポンポン叩いて鉄朗が呼ぶ。
「で、でも…朝練」
「公式戦の次の日は朝練ナシだ」
「…お、お弁当、作らなきゃ」
「オフクロが今日は購買で何か買えって言ってたぜ」
「……うぅ……で、でも」
鉄朗が近いから寝れないってなんでわかってくれないの?
いや…な訳じゃ、無いんだけど。
「……だって、鉄朗がぁ」
痺れを切らした鉄朗に抱き寄せられる。
「うあっ、て、鉄朗!」
「俺が守ってやるから、安心して寝ろ」
鉄朗はそう言うと私に頬擦りをして、そのまま二度目の眠りへと落ちていった。
なんて勝手な、と思いつつ残された私も瞼を閉じて。
とくんとくんとゆっくり動く鉄朗の心臓の音を数えていた。
安心とドキドキが混ざり合って、不思議な感覚。
でも鉄朗の腕の中は、すごく温かかった。