第4章 6月
「お…おじ、さんの……ぎっくり腰…の時の、薬」
そもそも他人に処方された薬使っちゃいけないんじゃないか、という問題はあれどインターハイを前日に控えた俺は藁をも掴む思いだった。
「……分かった、使わせてもらう。えっと、だから鈴ちゃんは外に出てて欲しいんだけど…」
俺の言葉に鈴ちゃんは首を傾げる。
「…あ、腕……動かせ、ます…か?」
大丈夫、大丈夫と言い、確かめる様に右腕を後ろに伸ばした途端、首に走る激痛。
「…………ッ!」
「…おじ、さんも……おばさんに、…その…やって、貰ってたから……恥ずかしく、無いです…よ」
クロん家の両親仲いいなオイ、なんて思うけど、それが恥ずかしくない理由にはならない。
「いやホントに俺は大丈夫だから!ほら左手ならなんとか動かせそうだし…」
「……む、無理は、ダメです。
……バレーが、できない、のは……辛い事、だから」
その言葉に、俺は何も言えなくなった。
クロから聞いた話だと、鈴ちゃんは中学のバレー部で虐めを受けていたそうで。
たぶんコートの外で練習を眺める歯痒さは誰より知っている。