第4章 6月
「………………………」
いろいろ段階飛ばし過ぎって言うか、俺クロに殺される。これはもしかして夢か。そうか俺、欲求不満なのか。
…いや、夢じゃない。
バレないようにこっそりつねった太ももは確かに痛い。
てかそもそも寝違えた首が痛い。
鈴ちゃんは顔を赤くして目を伏せていた。
「えっと、ごめん…よく聞こえなかったんだけど」
夢じゃないとするとやはり、聞き間違いか。
「…っ、ズボン、…脱い、で」
…聞き間違い、じゃ、無い。
何かを決心した様な面持ちでジリジリと距離を詰めようとしてくる鈴ちゃんが得体の知れない物に見えて、俺は反射的に少しずつ距離を取る。
「鈴ちゃん落ち着こ!一回落ち着こう!」
そんな悲痛な叫びが届いたのか、鈴ちゃんはハッと我に返った。
ジャージのポケットから何か白い封筒の様なものをゴソゴソと取り出し俺に突き出した。
それは病院の処方箋を入れる袋だった。
「え、何、…薬?」
コクンコクン、と二度頷く。
とりあえず受け取って袋に書き記された説明を見ると、それは腰痛や首痛に効く痛み止めの様だった。
ただ一つ問題なのはその用法で……
《この薬は肛門に入れて使用する坐薬です。飲んではいけません。なるべく排便後に使用してください。》
「……マジ……?」