第4章 6月
「俺、もうお嫁に行けない…」
意味が理解できない鈴ちゃんは困った顔をして首を傾げる。
投薬を終え下着とジャージを上げた後、効果が出るまでじっとしている様にとの言葉に従い、俺は動かず横になっていた。
尻に残る異物感に泣きたくなる。
30分くらい待つらしいので、俺は自分のカバンでも枕にしようと鈴ちゃんに頼んで取ってもらった。
少し固いがまあ仕方ないと、頭の下に入れる。
エナメルバッグは湿気でベタついて気持ち悪かったが、午後の練習には参加できるかもしれないと俺は安堵した。
そんな事を考えていたら遠慮がちに肩をトントンと叩かれた。
「…ひざ、まくら……します、か?」
何を考えているのか、何も考えていないのか。
無垢なその表情に、つい「あ、…はい」と答えてしまった。
(クロに見つかったら確実殺されるわ……)
いつの間にか雨足は弱まっていた。
体育館から微かに聞こえるスパイクの音に耳を澄まし、俺は小さな温もりに甘えた。