第3章 5月
「…そう言うオマエはどうなんだよ」
矛先を研磨に向け、話を逸らす。
心臓はバクバクだし、頭はフル回転させて次の手を考えてるのに、表情だけは取り繕って普段通りの黒尾鉄朗を装う。
妹としては好きだぜ、だなんて見え透いた小手先の嘘じゃ、鈴は騙せても感の鋭い研磨には通用しない事は分かりきっていた。
「俺、か…」
星座を観察する子供のように空を見上げ黙り込む。
こういう時研磨は、他の奴らと違って何を考えてるのか読み難い。
そういや、コイツが鈴をどう思ってるなんて聞いたことなかった。
毎日河川敷でバレーをやっていたあの頃に記憶を巡らせる。
俺達3人は幼馴染みで、昔から一緒に遊んでた…
研磨と鈴は二人じゃ会話にならなくて……
俺が間に入ってやったっけ。
…でも研磨は、いつも、鈴の事を、
見ていた…?
辺りはゾッとするほど静かで、堪らなく嫌な予感がした。
「鈴の事…好きって言ったら、クロは手を引いてくれるの?」
冗談なんかで逃げさせない、そんな真っ直ぐな言葉が、瞳が…。俺を射貫いていた。