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【ハイキュー!!】陽だまりの猫

第3章 5月



夕飯を食べた後、俺は鈴に電話を掛ける為、宿舎の外に出た。

暑かった昼間に比べ、夜は少し肌寒く感じる。さすが東北。

呼び出し音が2回鳴ったところで、電話は繋がった。


「…鈴、俺だ。もうメシは食ったか」


変な間が空いて、それから「…うん」と小さな返事が返ってきた。

「お前、今電話なのに頷いたろ」

「…なんで、わかった?」

さも不思議そうに聞いてくるから、俺は笑いを堪えきれなかった。

「まあいい、スパイクのコツだったよな…」

ひとしきり笑った後、鈴が聞きたがっていたスパイクの練習方法について、俺は幾つかアドバイスをした。


「…鉄朗、ありがとう」

「まあ気にするな。…それより俺がいないと寂しいんじゃねえか?」

笑いながら少し意地の悪い質問を投げる。
俺は狡いから、鈴の口から聞きたいのだ。


「……うん、…寂しい」


俺の為だけの、言葉。
自分自身の狡猾さに呆れて、その純真さを少し羨ましいとも思った。
必要とされる安心感を噛み締めるように、俺は鈴の言葉を反芻する。


「明後日には戻るから我慢しろよ。あ、お土産買って帰るからな。楽しみにしとけ」

「じゃ、切るぞー」と言いかけた時、鈴から名残惜しそうに「待って」とストップが掛かった。

ゆっくりと、絞り出すような鈴の言葉は、電話越しだと余計に焦れったく感じてしまう。

「……明日も、試合…頑張って」

「…おう」

「…あと、ケガ…しないでね?」

「当たり前だろ」

「……それだけ」

「ああ、オヤスミ」

「…オヤスミ」

通話終了のボタンを押すと、しんとした静けさに包まれた。
携帯をポケットにしまい、空を見上げる。
遮るものの無い広い空には星が散りばめられていた。


「…鈴に電話?」

「うわオマエいつからいたんだよ怖ええだろ」

「…今さっきだよ」

俺の幼馴染み、孤爪研磨は面倒くさそうに問いに答えた。



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