第2章 4月
そのまま笑顔を無くしたオフクロに耳を引っ張られ、玄関前の廊下に連れて来られた。
「鉄朗…アンタ、……避妊はしたの?」
真顔で問われる。
「ハァ!?し、してねえよ!!」
想像して欲しい。思春期の男子高校生にとって、母親からその話題に触れられることがどれだけクソ恥ずかしいか…。
勢いで出てしまった言葉に、二人の時間が止まる。
(あ、ヤバイ…)
否定の仕方が悪かった。
「ち、違げえんだよ、ホントに何にもしてない!ホントだって!!」
慌てて訂正する。最終的に俺は土下座までして誤解を解いた。
まあそう言うなら信じるけど、とオフクロは言うが、疑いの眼差しは何故か晴れない。
「今後の事はお父さんと話し合っておくから」
そう告げられ、その日は夕食についた。
もちろん飯を味わう余裕など全くもって無かったが…。