第2章 4月
俺の予想は当たっていた。しかし予想していたにも関わらず、戸惑っていた。そこで寝息を立てている鈴があまりにも無防備で…。
そもそも俺より早起きなコイツの寝顔を拝むこと自体が珍しいんだが…
「…反則だろ、コレ」
この家に来てからというもの鈴は足や腕の痣を気にして、家でも外でも一年中ジャージ姿で過ごしている。色気とは無縁なダサい格好だろうと俺にとっては可愛い鈴だった。
そんな鈴が…
飾り気の無いキャミソール一枚を身に纏い、白く柔らかそうな腕をさらけ出してベッドに横たわっている。
鼓動が早いのも、緊張してるのも、全て気のせい。そう自分に言い聞かせる。
起こす為、平常心を装いベッドに近づく。
"あの日"見てしまった傷と痣はもう殆んどわからないくらいまで薄くなっていて。俺は少しだけ許されたような気がした。
改めて見ると、いつも細腕と揶揄される研磨の腕とは全然違う。鈴の腕はもっと華奢で、滑らかで…
(触れてみたい…)
そんな自分自身の邪な感情に はっ、とする。