第6章 7月下旬
午前中に森然のマネージャー、大滝先輩から教えて貰ったプレハブ小屋の外に洗濯機はあった。
流石に5チーム分のビブスを詰め込んだらぎゅうぎゅうだったけど、スタートボタンを押すと電子音が鳴ってウォンウォンと洗濯機は無事に回り始めた。
手持ち無沙汰でふらふらしていると近くの壁に少し錆びたパイプ椅子が立て掛けてあるのを見つけたので、私は椅子についた砂埃を軽く払うと、大滝先輩から借りた粉末洗剤の箱を膝に抱え、座って待つ事にした。
あんなにうるさかった蝉が静かになって、今度は鈴虫みたいな虫がいっぱい鳴いてる。
ケータイ持ってくればよかったかなって思ったけど取りに行くのも面倒で、ぼんやりと夏の夜空を見上げていた。
赤くて明るい星がある。
名前が気になったけどわからなくて、やっぱりケータイを持ってくればよかったと思った。
ザワザワと木が揺れて、気持ちいい風が吹く。
夏の匂いがした。