第2章 4月
「ねぇキミ、おんなじクラスだよね?名前なんだっけ?」
担がれたまま、質問を投げ掛けられる。
(ゆ、揺れる…し、恥ずかしい)
「うっ……く、黒尾っ……鈴」
最初の日にクラス全員の自己紹介は済んでいる。喋ったことも無いので当然かもしれないが、名前を覚えられていない事は少しショックだった。しかし不満を述べている余裕が今の私には無い。
「鈴…鈴!うん、覚えた!俺は灰羽リエーフ。よろしく!」
(そんなの…知ってるし)
心の中で悪態をつく。せめてもの憂さ晴らしだ。それくらい許してほしい。
「鈴はすごいね!俺マジで驚いた!」
不機嫌の私など知らず、矢継ぎ早に続ける。
「俺さ、今からサッカー部見に行くんだけど、鈴マネージャーやらない?鈴と一緒なら楽しい気がする!」
(はっ!?)
なんとなく、なんとなくだが見える景色からして灰羽くんが体育館に向かってない事は気づいていた。降ろしてもらったらバレー部の部活見学に戻ればいいと思っていたのだが…
サッカー部に連れて行かれるのは困る!