第2章 4月
遠くから眺めるだけだった、猫みたいな緑の瞳が私を見つめる。
初めて合わせたその目は驚きで丸く見開いていた。
「に……逃げるよ!」
私の隠れていた木の影まで、10メートル程の距離を一瞬で詰めて、彼は私の手を取る。
(あ、ダメだ、これ…)
引っ張られ、ガクンと視界が動き、膝が地面に触れた。足の震えが収まらないのだ。走れない、力が入らないなんて初めての感覚だった。
いうことを聞かない身体とは裏腹に、何故か頭はとても冷静だった。
きっと今アドレナリン?がたくさん出ているのだろう。
「えっ、ウソ!大丈夫?立てる?」
私は無言で首を横に振る。返事はNOだ。
灰羽リエーフは先ほどの勢いが嘘のように狼狽えていた。
この混乱した状況の中、ガラの悪い上級生も黙って突っ立っている訳ではない。
「待てよ一年、逃げんのかよ」
「やべッ!」
ゴメンネと囁くと、灰羽くんは私の身体をグッと引き寄せ…
米俵の様に、肩に担いだ。