第5章 7月
どうも他所のクラスっていうのは、理由も無く居心地が悪いっつーか、場違いな気分になる。
ポツンと残されたスクールバッグが机の脇に掛かっていて、鈴の席はすぐにわかった。
後ろめたさを感じながらカバンを開けて、体操着を探す。
お目当ての物はスーパーの袋に入れられたが、俺は違和感を感じ手に取ったそれを広げる。
長袖の体操着は不自然に土で汚れていて、背中にはくっきりと2つ靴跡があった。
サイズからして、おそらく女子。
「…こんなの着せられるかよ」
ああ胸糞悪い。
キレそうになるのを必死で堪えて、体操着を再び畳んでカバンに戻した。
何もかもが狂ってやがる。
俺は鈴の着替えを確保する為に、何故か姿を見せない研磨に今日3回目の電話を掛けた。
「研磨、どこにいんだよ」
問い掛けに返事は無く、暫く続いた無言の後、研磨は言った。
「俺は…鈴に合わせる顔が無い」
「んなもん知るか!部活用の着替えあるよな?トイレまで持って来い、いいな!」
言うだけ言って電話を切る。
付き合いは長いが、こんなに研磨に腹を立てたのは初めてかもしれない。
「今は…ウジウジしてる場合じゃねえだろ」
誰もいない教室で俺は呟いた。