第5章 7月
「俺と鈴は本当の兄妹じゃない」
夜久を除く全員が、目と口を開いたまま固まる。
「もともと鈴は坂井って名字で、オフクロの姉の子供…あーつまり、俺のいとこだった」
「ええええええええええ!」
「ど、どう言う事ッスかそれ!?」
「……………」
叫ぶ犬岡、問い正すリエーフ、呆然とする芝山。
驚き方も三者三様。
「まあ落ち着けよ…順番に話すから」
夕飯時で賑わうファミレス。狭い通路を走り回る子供、ダラダラと勉強する学生、楽しそうにメニューを開く家族連れ。
周りはいつも通りの平和な喧騒なのに、俺にはその全てが嘘くさく思えてしまう。
きっと"あの日"目の当たりにした、クソみたいに残酷で不条理な現実が心の奥底にこびり付いて忘れられないからだろう。
「俺が高校入ってすぐ、4月の半ばか。研磨からすげぇ数の不在着信があってよ…」