第5章 7月
携帯のバイブレーションで目が覚めた。
手を伸ばして自分のを確かめるがメールも着信もは来ていない。
視界の端で微かな液晶の光を感じる。光ったのは隣の布団のクロの携帯だった。当の本人はというと、うつ伏せの状態で一向に起きやしない。
こういう時、神経質って損だよな。
目が覚めたついでに便所でも行っとくか、と起き上がった瞬間、廊下から中を覗き込む白い顔と目が合って心臓が止まりかけた。
「ひぃッ!?」
しかし驚いたのはお互い様みたいで、廊下からガシャンとプラスチック製の何か…おそらく携帯が落ちる音がした。
もしかしてと思って近づいてドアを開けると、ああやっぱり。
「鈴ちゃん……何してるの?」