第5章 7月
音駒バレー部が寝ている部屋は思いの外すぐに見つかった。
暗くて寝てるみんなの顔は見えないけど、見覚えのあるエナメルバッグや研磨のリュックですぐにわかる。しかし廊下まで聞こえるこのいびき、いったい誰?
(でも、ドア開けるとみんな起きちゃいそうだよね…)
梟谷は流石私立だけあって、うちの学校より全然きれい。それでも教室の引き戸を開ければ多少なりとも音が出るはず。
それと、雑魚寝するみんなを跨いで鉄朗の所まで行くのは非常に難しい。
悩んだ末、私は鉄朗にメールした。
《鉄朗、起きて》
用件だけの簡潔な一行のメール。
送信ボタンを押して、引き戸の窓から鉄朗と思わしき影が目を覚ますのを待つ。
…しかし、起きない。
(どうしよ、どうしよ…)
もう一通、同じ内容のメールを送りつける。
が、枕に埋まった影はやはり動かない。
大人しく部屋に戻った方がいいかもと思い始めたその時、鉄朗の隣の影がむくりと起き上がった。
そして、目が合う。
(や、夜久さん…!)