第1章 プロローグ
——金髪の少女がゆっくりと振り返った。俺はアリアへと歩み寄る。彼女の赤い目に吸い込まれる様な感覚だ。
「……キリト…」
「アリア。今回は許さないからな。どれだけ人を巻き込めば済むんだ、お前は……」
やれやれ、と腕を組んで頭を抱えると、アリアは俯いて言った。
「ごみんな……」
「こんなに迷惑を掛けて。冗談にも程があるだろ?これからは、「これからなんて、ない」
アリアはピシャリと言い放った。
言葉を遮られた俺は、呆然とアリアを見つめるしかなかった。
「私は罪人。罪を犯した莫迦(ばか)な天使は、羽根を折って下に逝くの。そう習ったでしょ?」
「アリア…?」
どういう事だ?
理解が出来ない………。
「やだなぁ。あんたの方が成績イイじゃないの。覚えてなきゃダメじゃん!」
明るく無邪気に笑う姿は、ごく普通の15歳にしか見えなかった。
「…私がこうして笑えるのも、これが最後なの。だから、キリトも笑って?」
…最後…そうか。
この時、アリアは本当に弾かれるのだ、とやっと理解したのだ。
「あぁ…」
アリアは、その白い華奢な指で俺の涙を掬い取った。
「アリア……俺は…」
俺は、アリアの言葉を信じるしかなかった。
もう二度と会えない——そう知った。
「何も言わないで。…辛い」
アリアの顔は、今にも泣きそうな程に歪んでいた。
最後まで涙を堪える姿も、一人前の聖天使を目指す彼女らしいな。
転生しても、君はそのままの君でいてくれるか…?