第1章 プロローグ
「——アリアちゃん!」
イーブィやクラスの奴等……特別学級や他学年の學徒(がくと)までもがやって来た。
「皆……!」
アリア…君は、こんなに多くの人から愛されているんだよ。
「ありがとう…皆、ありがとう…っ」
真っ赤な目から、大粒の涙が零れ落ちる。
悲しみ、悔しさ、そして感動。
涙にも、意味がある。
「……御遣い・アリア。そなたは私の使者で在りながら、天候に触れると云う罪を犯した」
開かれた天井から、御方様の声が聞こえた。
罪人には御方様の姿が見えるらしい。アリアの目の前に、きっと居られるのだろう。
「よって、そなたを弾く」
その声は天空にまで響き渡り、アリアに眩しい光を浴びせた。
「アリアァァァァァァァァ…!」
「私達のこと、忘れないでね…!」
すぐ横、上の校舎……至る所から、アリアを惜しむ声が飛び交った。
「…アリア」
俺も、目の前で名前を呼んだ。
すると、光の中から白い羽が差し出された。
「…私の、しるしよ」
血の付いた、純白の羽。
俺達が異性にそれを託す行為には意味がある。
…言わなくても、通じたのか。
俺はそれを受け取り、しっかりと胸に抱いた。
「アリア……俺は一生忘れない」
「うん…ねぇ、抱きしめて」
俺はアリアに腕を回し、優しく抱きしめた。光に包まれたアリアは眩しく、それでいて温かかった。
「キリト……怖いよ。
やだ、忘れたくない……
私、皆のこともキリトのことも、
忘れたくないよぉ……!」
肩にどんどん雫が落ちていく。背中をさすってやるも、彼女の嘆きは止まらない。
「やだやだっ……怖いよ、キリト……
忘れたくない……」
「アリア」
俺は耳元で名前を囁いた。
「怖いよな……でも、嘆くな。
もう一度、俺に笑顔を見せてくれ
最後くらい、隣で笑っていてくれないか……?」
光が強くなった。あと、もう少しで弾かれる。
俺はゆっくりとアリアから離れ、目を合わせた。
また、アリアは涙を流す。だが、それでも彼女は笑顔だった。
だから、俺も無理矢理笑顔を作った。
……最後の挨拶は、笑って交わそうか。
「…アリア」
「…キリト」
目も眩むほどの閃光が、部屋を満たしていく。
「「バイバイ」」
パァァッ
光は弾け、薄くなり、消えた。