第3章 真っ赤な眼
霊夢の背中が見えなくなった所で、俺は彼女が凭れ掛かっていた樹に登った。
用は済んだ。今日の所は帰らなければならない。まだ大學の課題も残っている。
——天界へ戻るにも、人目のある場所では騒ぎになるので出来ない。人がいきなり消えては、皆驚いてしまう。更には、御方様がお怒りにならないとも限らない。
帰り方は習った。
満開の桜に紛れ、小さく言葉を唱えた。
「——御方様、其方へ戻ります」
別に言葉は決まっていない。丁寧な言葉をお掛けになって戻る事、としか言われていないのだから。
俺は羽を伸ばして桜の樹から出、身体を宙に浮かせた。
御方様が言葉をお聞きになられれば、俺の姿はヒトには認識できないようにして下さる。
天から届いた光の道筋に沿って翔ぶ。後ろに耀きを散らし、雲を越え、光の輪を潜った。