第3章 真っ赤な眼
…転生?
よくよく考えれば、これは可笑しい。
アリアは俺と同じ歳だった。アリアが5年前に転生したなら、今は5歳の筈だ。
だが、この霊夢は俺達と同じ20歳。アリアが生きていれば、同じ歳になる。
…これは転生になるのか?
転生にはならないのでは?
いや、それも可笑しいか。天使の弾き、即ち転生。それ以外の道は無い。
それが、天使の唯一の最期(おわり)ではないか。
なら…霊夢はアリアの生まれ変わりではない?
いや、なら何故霊夢はこんなにもアリアにそっくりで、何故アリアの幻想を視るんだ?
アリアが、自分にそっくりな彼女に思念を送っている?いや、それはない。霊夢でないなら別のヒトに転生している筈だ。
…分からない。何故、彼女は……。
「——私、そろそろ行かないと。大学の昼休みが終わっちゃう」
フッと我に返ると、霊夢が腕時計で時間を確かめていた。
「…そうか」
「なんだか、仲良くなっちゃったわね」
ふふ、と笑う霊夢。
初めて、彼女の笑顔を見た。
「…うん」
「私、明星大学ってとこに通ってる。良かったら、今度来てくれる?」
「ああ。必ず行くよ」
場所は調べれば分かるだろう。俺は立ち上がり、霊夢に右手を差し出した。
「…私、左利きなんだよね」
左手を差し出され、俺は失笑した。そうだった、アリアは左利きだったな。
「じゃあ、またいつか」
「うん、待ってる」
握手をし、目を合わせる。
霊夢の照れたような笑みに、口が滑ってしまった。
「やっぱり…笑顔が可愛いな」
「…は?」
アリアの人懐こさが垣間見え、おれは俺は嬉しかったのだ。
「バカ言わないで」
…そう言いながらも、霊夢は今日1番の笑顔を見せ、俺に背を向けて歩き出した。
——また逢える。
そう信じて…いや、分かっていた。だから、振り返る事はしなかった。