第3章 真っ赤な眼
“視る”…そうか、分かった。
依頼書には、『突如目が赤くなり、不思議な幻想が視える』とあった。つまり、彼女の目が赤い間は、その幻想が視えているという事。
なら、これから話す事も、その幻想か。
「昨日も視たわ。
私によく似た女の子が、何処かに流されて行くのを。その子、泣いてたわ。誰かを呼びながら…」
…アリアだ。
アリアが、転生して記憶を失っても、霊夢に思念を残しているのか?
「その時、胸がキュッて…締め付けられるように痛むの」
「ア…その女の子と意思が通じている、という事か」
霊夢の意識下に、アリアは取り残されているのか?
…そんな事があり得るのか?ましてや、神聖な弾きを御方様が失敗するなんて事はあり得ない。
だが、そうとしか思えない。
「そう…なのかな…」
目の色が戻った。
サア…
気持ちのいい風が吹き、桜の花びらがひらひらと舞い散る。
2人でその光景を眺めていると、なんだかアリアと過ごしたあの日を思い出させた。
ちらりと霊夢を盗み見ると、微かに笑みを見せている。
俺は頬に熱が集まるのを抑えながら、心の中でグルグルと繰り返した。
落ち着け!相手はあくまでもアリアじゃない。アリアの転生したヒトで……。