第3章 真っ赤な眼
「…もしかしてその子、死んじゃった?」
「…え?」
今度は俺が驚いた。
何故知っている?いや、疑問系だし確信はないのだろうが…それでも、何故そう問えるのだろう。
彼女は顔を上げ、静かに答えた。
「…なんだか、少し寂しそうだから」
…寂しそう、か。
5年経っても癒えないのか。この傷は。
それとも、5年なんてのはまだまだ短いのだろうか。
しかし、霊夢もやはりヒトなのだな。
天界では「死」は精神的なものを意味し、肉体的なものには使わない。そもそも、ヒトを基準に考えれば天使に肉体らしき肉体は無いという方が正しい。その事から、天使が弾かれる事は「死ぬ」と表現しない。
また、「生きる」ことも精神的な意味である。天使は天帝から授かりし命(めい)の為に天界に生存し、ヒトを助ける仕事を務める。なので、自ら命(いのち)を絶つことは許されない。天使は天帝の子だ。自ら命を絶てば、それは天綱を破る事となり、死して尚弾かれる。
だが、ヒトに説明するのであれば、やはり『死ぬ』という方が適切であろう。
「死んだ…うん、それに近いな」
それに、なんと言ったって、アリアが転生したのはお前なんだからな、霊夢。
「そう…やっぱりね」
霊夢はまた俯いて、膝を引き寄せ其処に顎を乗せた。
「愛する人を失う痛みは、私も知ってるから」
「…失ったのか?誰かを」
「覚えは無いわ。でもね…時々“視る”の」
すると、霊夢の眼が再び赤く光りだした。