第3章 真っ赤な眼
「…何?」
鋭い声だった。棘がある訳でもないし、低い訳でもない。言うなら『冷たい』か。警戒しているのとはまた違う、『誰とも関わりたくない』…そんな雰囲気を纏っている。
「いや…」
霊夢の隣に移動し、腰を落とす。
霊夢は一瞬驚いた顔を見せたが、また少し俯いた。
…不思議だ。アリアとは全く別人の様なのに、何故か目が離せない。
君は本当に不思議な人だね。
「…ねぇ」
女らしい、高い声。だが、媚びる様な甘さはない。
だからだろうか。ヒトの温かさは感じられない。冷え切ったココロが、声にも影響している。
再開——出逢って間もないのに、俺は霊夢の分析ができていた。
「私が起きた時、貴方——霧人がいた。で、何か言ったわよね?」
「…ああ」
「確か、『久し振り』って。その後、誰かの名前を呼んでた。…それは覚えてないのだけれど」
焦茶色の瞳が、俺を射抜く。
多分、こちらが元の色なのだろう。
「…好きな子に、似ていてな」
霊夢は目を真ん丸にする。
「好きな子なんているのね。意外だわ」
お前だよ。そして失礼だな。
心の中でツッコミを入れた。