第5章 ファーストキッス
璃子はそうでもないけど、あっちの人って、じいちゃんばあちゃんは特に、スゲー訛ってんだよ。日本なのに言葉通じないくらい。まあ、当時まだ俺は一桁だったし、そりゃ不安になるでしょ。しっかり璃子の服とか掴んでたよ。置き去りにされたら多分、俺は死ぬ。そんくらいの勢いで。
で、釣りかなんかしてた時。俺、魚探すのに夢中で川の中ずっと見てたの。そしたら、横にいたはずの璃子が気付いたら居なくて。『はぐれた!?』って俺、パニくっちゃって…。
『璃子ちゃん…?璃子ちゃぁ~んっ!?』
叫んでも、返事はない。風と川の音にか細い声はかき消されてしまう。周りを見てもうっそうとした木々が広がってるだけ…。
可愛そうに、取り残された幼い潤少年は泣いちゃったよね。泣きながら璃子の名前叫んで、あっちこっち走り回った。
璃子は家に忘れ物を取りに戻ってただけ。ちゃんと俺に『行ってくるからここで待っててね』って断ったらしいけど、潤少年、夢中でまったく聞いてなかったらしいです。
ちょっとだけ迷子になってた俺を見つけて、璃子がすっごい嬉しそうだったのは憶えてる。
で、事件はその直後に起きた。