第3章 比べません
運ばれてきたコーヒーを飲みつつ、座席をひとつ完全に占領してる荷物群を眺めた。
「しっかし…また買ったね~。すげー量」
「いいの。全部送るから。…ていうか、潤のが多いんだよ!」
「俺買ったの1セットだけだろ」
「そうだけどっ!またこんな派手なの…着れないんだってば」
「なんで。フツーに出かけるときとか着てよ。そんな派手じゃねえって」
「派手だよ!向こうじゃこんなの着てる人いないんだから。目立ってしょうがないんだよ?」
「そお?」
「…潤の買ってくれた服着て歩いてると、絶対みんなに『結婚式かぁ~?』って言われる」
「あはははっ!マジかよ」
「マジなんだってば!」
でも、マジでそこまで派手じゃねえんだぜ?まあ、安モンとは言わないけど、それでもこっちじゃ、普通に街中で見かけるレベルの服。ワンピースにカーディガンとか。どっちかっていうとシンプルなやつ。またこれが…似合うんだ!普段見慣れてないから、可愛いカッコ(つってもこっちじゃ普通な)させると、目を見張るくらい変わる。だから毎回、俺は土産代わりに服を買ってやってる。俺セレクトで、上下靴までトータル。意外と楽しいんだよ、生マネキン♪
「ま、せっかくだし着てやってよ。絶対似合うって」
「ありがとう。じゃ、さっそくこの後、ホテル戻って着替えさせていただきます」
「ははっ。そうしてください?そのカッコじゃさすがにな」
夕食はちょっといいイタリアン予約してある。さすがに、ジーンズとTシャツって格好じゃね、って店。
「でもやっぱこういう服って窮屈なんだよねぇ…。イザという時動けないしさぁ…」
「頑張って!大丈夫、イザという時は俺が守ってやっから」
「…」
「んだよ」
「そんな細腕で?」
「だから。こう見えても絶対おまえより力あるから。何なら腕相撲でもやる?」
「お、いいねぇ。私強いよ~?」
いやいや。やんないから。マジでは。だってカフェでそんな…。ガキじゃあるまいし。ねえ?
…って
なに目ぇキラキラさせて腕まくりしてんだよっ!!(笑)