第8章 痛みと光
二人とも黙ったまま、夜景を眺めてた。
しばらくして、俺はまた尋ねる。
「そろそろ思い出しましたか」
「そんな急になんて無理。ていうか、それホントに私?した?してないでしょ」
…うっわ、サイアク。この期に及んで、まだそんなこと言う。どんだけキレイに忘れてくれてんだよっ。
「あ~…ホント、ムカツク、おまえ」
「そんなこと言われたって!だって、ホントに憶えてないんだもん!」
ふー…
「…わかった。じゃ、思い出すの、手伝ってやる」
「え?―――んむっ!?」
イライラは時に、刃になる。
俺はまた璃子の唇を奪った。ホント無防備。てか、こんな簡単にキスさせんなよ…。
「んっ、んぅ…っ!」
さすがに二度目は冷静。ドンドンって俺の胸を叩いた。
「はっ、はっ…。ちょ、なにす…」
「思い出すまで、やめないよ?俺」
「潤?…ふっ!んんっ!?」
もう、『憶えてない』なんて口にしてほしくない。
もうこれ以上、俺の記憶を消してほしくない…。
また易々と璃子の口を塞ぎながら、俺は胸が苦しくなるのを感じた。
もう、何も言わないで
もういいから
思い出さなくても、いいから…
だから
いま、ちゃんと俺をみて
俺のこの20年以上のトラウマ、受け止めて…
「あっ…う、んんっ、ふっ…」
「っん…ん、チュ…ク…」
「!!!」
「…クチュ…」
「ン…ッ…」
…やっぱり、だ。
璃子、俺のこと拒んでない。少なくとも、本気では。
『ショウちゃんと結婚する予定なのに!』って言うのにはマジでムカついたけど
でも
ほら
「んっ…んぅ、ふ…ッ」
どんどん、璃子ん中入ってってるのに、拒まない。積極的に絡めてはこないけど、こんな音するくらいに激しいキスしてんのに、璃子、俺を本気で突き飛ばしたりしない…。
なあ
これって脈アリってことでいいんだよな?
なら俺、言っちゃうよ?
もう、ガマンできそうもねえし…。