第7章 聞いてねーよ
「忘れるとか、あり得ないんだけど」
「私…ホントに…」
「俺のファーストキスなんだぜ?」
「そんなこと、言われても…」
「…チッ。マジふざけんなよ…」
舌打ちした俺に、今度は璃子が反撃。
「そっちこそ…何なの!?い、いきなり、キスなんてっ!信じらんないっ!!」
「おまえが悪いんだろ!つか、あん時はおまえがいきなりしたんだよ!」
「知らないよ!ていうか、いま、関係ないじゃん!!…どうしてくれんの?私…ショウちゃんと結婚するつもりだったのにっ」
「…はぁっ!?」
ケッコン!?
誰だよ、“ショウちゃん”!!(つか、その名前、偶然!?)
「結婚て…何だよそれ。聞いてねーし!つか。そいつ誰」
「隣のっ、幼馴染のショウタ…。あれ、紹介したよね?」
「されてねえよ」
「そうだっけ…??」
されたくもねーけどな。
隣の、ってことは…畑仕事手伝ってる農家の息子ってことか?
「…婚約でもしてんのかよ」
「婚約っていうか…『将来はショウちゃんのお嫁さんになる~』『じゃ二人で畑やろうね!』『ウン!』って、よく」
「・・・」
それって、よくある小さい頃の…
「口約束だろっ?んなもん婚約とは言わねーだろっ!」
「で、でも、なんとなくそうなんだろうなって、思ってたから…」
「なら俺だって、そん時のトラウマのせいで――」
「トラウマ?」
「っ」
シマッタ。
「トラウマって…もしかして、その…ファーストキスっていう…?」
さすが看護師。そういうことは反応早い。
でも
俺が欲しいのはそんな目じゃねーんだよ!
「頼むから、思い出せよ…」
「そんなこと言われましても…」
「…思い出すまで帰さねぇからな」
「はぁ?」
俺、意固地になってる。
わかってるよ、バカなこと言ってんのも。ガキ丸出しだってのも。
でも、やっぱ悔しいんだよ。俺ばっかりずっと囚われてたことが。
それに
今でもまだ、俺はおまえに…