第6章 アンビリーバボー
「信じらんねぇ…」
今世紀最大級の衝撃。あのときのキスを、璃子本人が憶えてないことが判明…。
「だから、してないってば。そんな…するわけないじゃん」
「おま…ふざけんなよっ!!」
半ギレだよ。そりゃそうだよ。だって…俺、ファーストキスだったんだぞ!?
懇切丁寧に当時の状況を説明してやったけど、璃子の表情は困惑したまま。
「え~…。やっぱしてないって」
「したんだっつーの!当事者が言うんだから間違いないだろっ」
「…私は憶えてないもん」
あ―…そうくる。そういうこと言う。密かに俺のトラウマになってるあの事件を
『憶えてない』
…ああ、そう。
って。
「ふざけんなっ」
「ひゃっ」
唐突に俺は璃子を抱き寄せ、頭を押さえて無理やり唇を奪った。半分衝動だった。半分は…意地?
忘れたっつーなら、思い出させてやる
そんな気持ちだった。
「…思い出した?」
璃子は少し俯いて、フルフルと首を横に振ってる。
ショックだよ。正直。
でも
気付いた。
璃子、俺のこと拒絶しなかった。
重ねるだけのキスだけど、意識的にちょっと長くそうしてた。だから、俺を突き飛ばすくらいの時間はあったはずなのに。