第1章 悪夢の再来
彼女たちが住む村は、広大な森に囲まれている。
暗く、どこか不気味な森。
そこはいつからか"ヴァンパイアが住む森"とされ、村人は誰1人近づこうとはしなかった。
たまにやってくる行商人と、ある少女を除いて。
「…あれ、おかしいわね…」
その少女こそ、今絶賛迷い中のノエルである。
義姉と別れ、一直線にこの森にやってきたはいいものの、普段想い人がいる場所に辿り着けなくて困っていた。
この森に来ることを彼女は恐れない。
それは彼女が少し変わった目で見られる所以でもあったが、同時に勇敢な娘だと尊敬を集める理由でもあった。
しかし、この森で迷うことは彼女にとって困る。
決して方向音痴なわけではない。
この森がやけに似たような景色ばかり続くのが悪いのだ。
とはノエルの持論だが、彼女以外は皆彼女が極度の方向音痴であることを知っていた。
しかしそれを認めようとしないからこそ、いつもノエルは迷っているのである。
「……はぁ」
「お困りのようだね?レディ?」
「ひゃあっ?!……ウォーレン!!」
キョロキョロと辺りを見回す彼女の背後に忍び寄る影。
やがて真後ろにやってきたその人物が驚かそうと耳元で囁くと、案の定彼女は大袈裟なまでに驚いてばっと後ろを振り返った。
初めは警戒していたものの、犯人の顔を見るとすぐにその顔には花が咲く。
そう、その人物こそノエルの恋人であった。
名を、ウォーレンという。