第2章 望まぬ再会
“ハルカは日付が変わった瞬間からマサフェリーの妻となっている。それは我が家の娘となったと同義。これ以上娘を傷付けるものは村長たる私が許さない”
「父上が…そんなことを」
「…お義父さまは、私に本当のことを教えてほしいと仰った。私が告げた言葉を無条件に信じて下さいました」
自分のせいで、大切な息子を人ならざる存在に変えてしまった。
そんな自責の念にかられ、ただひたすらに詫びるハルカに、村長は優しく告げたという。
「男たるもの、妻となる存在を守ることは当然だ。私は、彼奴を誇りに思う、そう仰って下さいました。その言葉に…救われたんです」
自身の存在を肯定した村長に、義理であれ父親に、村に留まるよう説得されたハルカは、程なくして現れたノエルの話し相手としていることに決めた。
やがて村長の言葉もあってか、冷静さを取り戻した人々からは謝罪をされ、村での迫害を受けることもなくなり。
日に日に花が開いていくように成長していく義妹の姿を、微笑ましく見つめてきたのだ。
「…だから、もう奪わせたくない」
ハルカの瞳に宿る強い光。消えかけていた心は、大切な人々が蘇らせてくれた。
それならば自分に出来ることは、失われようとしている彼女の命を何が何でも守ること。
「もう逃げません。たとえマサフェリーさんが敵だとしても」
「お義姉さま…」
「私の義妹を、返して頂きます」
それぞれが、それぞれに絡み合う。
アイレスが、マサフェリーが、ハルカが、ウォーレンが。
そして、ノエルが。
そもそも出会うはずのなかった存在。
二度と会うつもりのなかった相手。
望むべくして出会ったわけではない彼ら。
これからどうなるのかさえ、5人には分からない。
夜の闇は、更に深まるばかりだった。