第1章 悪夢の再来
結局義姉の言う通り、オレンジ色のドレスを着ることにしたノエル。
現在はハルカに髪を結ってもらっている最中である。
「どんな髪型がいいの?」
「何でも。お義姉さまが私に一番似合うと思うものがいいわ」
「相変わらず任せっきりなんだから…」
いくら奔放娘とはいえ、身だしなみにこうまで無頓着では将来が不安になる。
自分が甘やかして色々決めていたのが悪いのだろうが、全て人任せになったこの義妹にハルカは気付かれないようにため息をついた。
「彼とは仲良くやっているの?」
「えぇ、とっても優しいのよ彼!いつかお義妹さまも会ってほしいわ」
「……そうね、いつか会えたらいいわね」
歯切れの悪い義姉の返事にノエルは首をかしげる。
気付けば髪を結う手も止まっていたことに気付いた彼女は振り返ると、先ほどまでとは打って変わって真面目な顔をして言った。
「大丈夫、お義姉さまが言ったことは忘れてないから…」
「…そう」
人は誰しも秘密を抱えて生きている。
それはこの義理の姉妹も同じこと。
お互い相手に話せない秘密を抱えて、義妹は部屋を出て行き、義妹はそれを見送る。
その秘密を互いが最悪の形で知ることになるのは、そう遠くない未来とも知らずに。