第2章 望まぬ再会
「お義姉さま、どうしてここに…」
ここに来るまで様々なことを想定してきたノエルだったが、義理の姉の介入は流石に考えていなかったらしく、その額に汗が流れる。
自分にたくさんのことを教えてくれた、かけがえのない義姉。
彼女を巻き込むつもりなど毛頭無かったというのに。
「ハルカ…本当に、お前なのか…?」
「…はい。お久しぶりです、マサフェリーさん」
一方のマサフェリーもこの新たな介入者に戸惑いは隠せなかった。
人間であることを捨ててまでも守りたかった存在。
何よりも大切で、愛している存在が、目の前にいることに。
「…年をとったでしょう?私。あれから10何年経ったんですもの」
一方のハルカはそう言って笑う。
その優しい微笑みは、何年経っていようとも変わっておらず、尚のことマサフェリーの胸を締め付けた。
「いや、変わらないお前のままだ」
「そうですか?…ありがとうございます」
それでも、姿の変わらないマサフェリーと、時の流れには逆らえないハルカ。
二人の間を隔てる壁は、あまりにも大きかった。
「ハルカ…あぁ、昔生贄に選ばれたマサフェリーの妻になるはずだった子だね」
「…あなたは、アイレス」
「その通り。こんなところまでどうやって来たのかは知らないけど、今は君に用はないんだ。帰ってもらえるかな」
「それは出来ません。私の…義妹を返して貰います」
アイレスのどこまでも冷えきった瞳に射抜かれても、ハルカは怯まない。
2人の間で静かに散る火花を、周囲の3人は見つめるだけだ。
「…ふふ、君は強くなったみたいだね。あの後、遅かれ早かれ潰れてしまうと思っていたのだけど」
「私もそう思っていました。…でも、それでも生きてこれたのは、マサフェリーさんの家族と、ノエルのおかげなんです」
「…ちょっと待ってくれ、アイレス」
その時、マサフェリーとウォーレンがアイレスの言葉に疑問を呈した。
“あの後”と言えばおそらく、18年前にハルカが生贄に選ばれ、マサフェリーが吸血鬼となることでその命を守ったあの夜の後のことに違いない。
彼らが知らないその時間に、何が起こったというのか。