第2章 望まぬ再会
「……ウォーレン、その娘は知り合いなのか…?」
ノエルを抱きしめるウォーレンの背後から、1人状況を把握しきれていないマサフェリーが呟く。
目の前の少女が誰なのかも、彼は知らないのだ。
「マサフェリー、彼女は」
「良いわ、ウォーレン。私が自分で言う」
彼女を離したくないというウォーレンの意思を、緩まない腕の力から察したノエルはそのまま身体だけマサフェリーの方に向けた。
「初めまして、マサフェリーさん…いえ、お兄様」
「兄?…お前は、いったい」
「私は貴方の妹、ノエル。貴方の代わりに村長となる人間です」
マサフェリーの瞳が驚愕に開かれる。
この場において自身の妹を名乗る娘が現れた反応としては当然だ。しかし、なせだかウォーレンはその反応に引っ掛かりを覚えた。
「では…今も父上が村を?」
「はい。今もお元気です…お義姉さまも」
「っ!!」
敢えて間を置いたあとに告げた存在。
それはマサフェリーにとって何より大切な女性。
彼に動揺を与えるには充分な、娘。
かつて生贄として選ばれながらも、死ぬことはなかったただ一人の娘。
そして、マサフェリーの妻。
ハルカ。
「彼女は…ハルカはどうしているんだ?」
「それは…」
ノエルが言葉を続けようとした、その時。
「ノエル…っ!!」
勢いよく開け放たれた扉。
呼ばれた自分の名に、彼女が驚いて扉に目を向けると。
「…お義姉さ、ま…?!」
「ハルカ…!!」
話題の人物、その人がいた。