第2章 旦那
テレビの向こうがその日1番であろう歓声で湧き上がった。
「彼女さーん見てるぅー!?」
「正月早々いい話ですね!」
「お茶の間のみなさんまで射抜かれたで!」
もちろん我が家のお茶の間も湧いた。
「○○!おめでとう!」
「あ、ありがとう・・・!」
「お前も結婚かー!犬飼選手なら大丈夫だろう!」
「むしろ○○で大丈夫なの!?」
「母さん!」
冥はお願いするように、カメラに向かって頭を下げていた。
「おめでとうございます!!」
テレビの向こうの一際大きい声に、会場も我が家も女子アナに目を向けた。
冥は至極恥ずかしそうに顔を俯けていた。
「おめでとうございますって、まだ結果が分からないよー!?」
古株芸能人が野次を飛ばす。
「えっ、でも、犬飼選手でしょ!?」
「断る人なんておらんやろー!」
わいわいがやがやと番組が騒々しくなる。
「○○さーん!どうなのー!?」
テレビの向こうの呼びかけに、あたしは両親と顔を見合わせた。
「いやどうなのって言われましても・・・。」
あたしが答えても、向こうに届く訳が無い。