第2章 旦那
テレビの向こうの芸人が、椅子を倒す勢いで突然立ち上がった。
「画面の向こうの彼女さんにプロポーズや!」
一瞬遅れて、他の人達がそれに乗る。
「そうだそうだ!」
「いいぞー!」
「彼女さん見てるやろか!?」
「犬飼選手の出てる番組はさすがに見てくれてるでしょー!」
周りに後押しされて、引くに引けなくなった冥の顔が真っ赤に燃え上がる。
その顔で、夢見心地だったあたしは笑ってしまい、ようやく心に余裕が持てた。
「それでは犬飼選手!カメラの向こうの彼女さんにプロポーズの言葉をどうぞ!」
冥が、今度こそあたしと向き合った。
「あー・・・○○。結婚・・・してください。」