第2章 女王様と狂犬
そして、A寮に向かうと視線がぐさぐさ刺さってくる。
今まで、当然のようにハチと同じ寮だったから、こんな目に合わなかったのに。
あーあ、最悪。
俺は、携帯でハチに電話する。
でも、アイツ全然出ないし、俺アウェイ感だし、凄く居づらい。
外に出て電話しまくったけど、最終的に切られた。
何、アイツ!
最初はヘラヘラして嫌がっても向こうから擦り寄ってきた癖に!
同じクラスじゃなくなったら、はいサヨウナラ?
無いよな、ハチ!!
すると、寮の奥から聞き慣れた声が。
「でさ~」
ひょっこり顔を出せば、それはハチ。
複数のお気に入りと一緒に行動してる。
さっきの水無月っていうお気に入りも一緒だ。
「ヤりまくってんのに、あんな表情して、純情ぶって馬鹿みたいな奴だよな~」
――ハチ?
「本当にねぇ~。どうせ、毎日知らないおじさんとエッチしてるんだよ」
嘘だよね、俺の話じゃないよ。
だって、ハチだって一緒に居るんだよ?
「委員長もさー、信じちゃって可哀想だよぉ~」
「ま、いいじゃん。もうあのヤリマンの相手しなくていいんでしょ?」
まさか、とは思ってたけど、頭の中が真っ白になる。
ハチ、ねぇハチ。
止めて、止めてよ、ねぇ。
「それ、楽なんだよ~。今からお前らの相手だけすればいいしなー!」
俺は、無気力になってスマホを落とした。
そのせいで、辺に音が響いて……。
周りの視線がぐさぐさ刺さってた理由も、今になって理解した。
ハチ達が悪口を言ってたせいだ。
音を聞きつけたハチ達が、寮の外へやってきて……。
驚いた表情のハチと、目が合った。
周りのお気に入り達は、ニヤニヤと俺を見下してる。
「……」
噂は聞いてた事はあった。
でも、ハチは噂は噂と言って、笑ってた。
でも、裏じゃどうだろう?
「へぇ、ハチ。お前がそんな八方美人だったなんて、俺知らなかった」
声が、震える。
こんなカッコ悪いの、俺じゃない。
でも、いつもみたいにクールに決められない。
何言わないほうがいいんだけど、自然と涙は出てくるし。